錠前破りは錠を破り
そしてまた溜め息をつく
錠前を破り、重く分厚い扉を力いっぱい開くとその中に浮かび上がるものは
またしても堅く錠で閉ざされた金庫の扉。
もうこれで何個目になるのだろう
開けた金庫の中に身を屈めて入り、その中の金庫を開けるべく錠に手をかける。
最初は自分の背丈よりも遥かに大きな金庫だったのに、開けるに連れて小さくなっていまはもう屈まないと中には入れない。
最初に開けた金庫の扉は遥か彼方向こう───長い長いトンネルのようになってしまって、もう外の光すら見えない。
戻るのも億劫で、もはや半ば自棄になって出てくる金庫の錠を破り続けている。
まるでマトリョーシカだな
フタを開けると次々と中から人形たちが出てくる入れ子人形。
あれは最終的には豆粒以下と言えるほど小さな人形が出てくる。
この金庫も最終的にはそうなるのだろうか
開けて開けて終に出てくるのは豆粒ほどの金庫───
きっとそうなるのだろうという思いが頭のほとんどを占めているのに、僅かに残る期待が自分に錠前を破らせる。
金庫の中に仕舞うものはイイモノ、大事なモノ。
しかし開けても開けても金庫ばかりの現実に、絶望ばかりが大きくなってゆく。
気づけばトンネルのようになった金庫の中にいて、出口は遥か向こう。
音も光も無い空間でただひたすらに錠を開け続ける。
なにをしているのだろう、自分は。
男はこの行為が永遠に続くのではないかとすら思えてきていた。
カチリ
咬み合った音がして錠が開く。
大きな絶望と地を這う期待を持って扉を力いっぱい引く。
そこに、金庫は無かった。
男はそれを認めるや歓喜した。
少なくとも、錠前を破るという延々と続けてきた行為から解放されたのだ。
嬉しさのあまり商売道具を一式放り捨て、金庫の中に飛び込んだ。
キギィ・・・・・ゴウン
男が飛び込んだ瞬間、その後ろで金庫の扉が重く閉まった音がした。
ハッとなった男は慌てて振り返るとガゴンッと頭をぶつけた。
倒れたその背にも金庫の壁がぶつかる。
金庫の中に金庫は無かった。
そして、その金庫の中には何も無かった。
ただ、閉じ込められた哀れな錠前破りがその中身となったのである。
冗談じゃない
男は思う。
金庫の中身は大事なもの・・・大事な大事な、
冗談じゃない
狭苦しい金庫の中で、男は必死に暴れまくった。
重い重い扉に向かっているつもりでも、実は金庫の壁なのではないかと恐れて、とにかくがむしゃらに。
鍵なんてかかっていないのに、重い扉はそれだけで疲労した男を閉じ込めておくには充分すぎる力を持っていた。
冗談じゃない
暴れて暴れて・・・・・酸素の供給の儘ならない閉ざされた空間は、容易に男の意識を奪い始めていた。
冗談じゃない・・・・・・・
金庫の中身はイイモノ、大事なモノ・・・・
大事な大事なモノを仕舞っておくトコロ
仕舞われたのは
仕舞われておくべきなのは
大事な大事な、アナタのいのち。
END
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・・・・・檻だっつーのに金庫ネタですいません(笑)
極論はこういうことだよなあ、金庫ってと思ってこうなりました。
大事なものを入れておく場所、大事なもの=いのち。
すぐ酸欠でヤヴァイことになりそうですが、一瞬でも保管できますよね、いのち。
でもいくら狭いトコ好きな自分でも金庫の中はイヤです。暗所恐怖症なんで(笑)
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