彼女はいきなり現れた。
いきなり現れ、彼女は言う。
───貴方には雷神を司る竜をあげる、と。
『 016.片隅 』
で、貰った。
よこせと言われればヤダと言うが、くれると言うなら貰う。
これは一貫した俺のポリシー。
それがケンカだろうと食い物だろうと同じこと。
まさか雷様の力を持った竜をやる、なんて言われるとは思わなかったが。
「はい、あげる」
そう言って彼女は俺に手を差し出した。
俺は無造作にその手を握る。
別段、変わったことは無く、傍目から見ればただの握手で終わった。
「───もう俺はその雷神とやらを貰っちまったのか?」
今ので?と問えば彼女は「うん」と肯いた。
「試しに雷撃でも出してみるといいよ」
出し方は簡単。攻撃対象を定めて、狙いを定めて、コイツを撃墜すると強く思えばいい。
そう彼女が言うので、俺は適当に辺りを見渡し、平原に二・三本群れを成して生える木に狙いを定めた。
「狙いを定めて・・・どうすりゃいい?」
念じるのは簡単だ。
だが相手を『倒す』としたらイマイチ気合が足り無い。
「腕を振る、とか?」
突き立てた人差し指を顎にあてて小首を傾げる、年の頃は俺とたいして変わらなさそうに見える、彼女。
「───破!!!」
言われたとおり気合一発振り下ろした腕から、青白い稲妻が奔る。
大地を舐めるように奔ったそれは、見事群生する木々を白く、蒼く、焼き落とした。
「・・・・・すげ」
いきなり目の前に現れた彼女を見ていた手前、全否定していた訳ではないがこれほどとは思ってもみなかった。
「よっし。んじゃ、あたし行くね」
俺の試し撃ちを見終えるや否や、彼女はそう言って立ち去ろうとした。
「おいおい待てよ。アンタいったい何モンだ?つーか、ホントに貰っちまっていいのかよ」
慌てて振り返り、彼女の肩を掴む。
彼女はそんな俺をきょとんとして見つめた。
「何モンて、あたしは別になんでもないよ。それとホントに貰っていいよ。あたしは預かっただけだから」
「はぁ?預かっただぁ?なんでもねぇって、なんでもないヤツがこんなモン預かれるのかよ」
ワケが解からねぇと素っ頓狂な声を上げれば、然もないと彼女は言う。
「預かるだけなら、ね。完璧に使いこなすのは、センスのいい人じゃないとダメってなだけで」
あたしもう行かなきゃ。
彼女は立ち去ろうとする。まだやることがあるのだと。
「炎神を、貰ってくれる人のトコに行かなきゃ」
「預かってたのは俺の雷神だけじゃねぇってことか?いくつ預かってんだ」
問えば、水神・風神・地神・癒神・・・・・出るわ出るわ、キリがない。
「んなに預かってんのかよ・・・・」
「だってこれだけ預けられたんだもん」
一応、誰に、と問うてみた。
が、彼女は何も言わず、迷子の子の様にふるふると首を横に振るばかりだった。
「もう、誰にやるのかは決まってんのかよ」
深い追求はとくにせず、質問を続ける。
「ううん。でも、逢えばわかるから」
ということは炎神をくれてやるヤツのトコに行くと言っても当てはないということか。
「・・・・預かったもので、余ったのがあったらあたしのにしていいって言われてるの」
不意に、彼女の口からポロリと零れるように言葉が落ちる。
「・・・・へぇ?」
何処か心もとない彼女の様子を訝しく思いながらも、相槌を打つ。
「最後になんにも残らなくて、カラッポになっちゃったらどうしよう」
ともすれば風にさらりと梳けてしまいそうな言葉だった。
なんだかまるで、預かったものがすべて無くなるのと一緒に
自我も失って動けない人形になってしまったら、と言っているようだった。
『カラッポ』の意味が俺にはそんなふうに聞こえて、彼女が壊れモノに見えた。
「・・・・おい、炎神は雷神より強ぇのか?」
どこか殺気雑じりの俺の声音に、彼女はビクリと身を竦ませる。
「え?さ、さぁ・・・・互角、じゃあないのかな・・・・どっちも『焼く』ものだから・・・・」
オドオドと言葉を返す彼女を横目に、俺はよし、と頷くと彼女の腕を掴んで歩き出した。
「行くぞ」
「え?は?行くぞって・・・何処へ?」
突然の事態に、彼女はグイグイと俺に引っ張られながら目を白黒させている。
「決まってんだろ、炎神をこなすセンスのいいヤツのところだろーが」
「えぇええええ?!!なんで?!!」
初めて聞く彼女の悲鳴。やっと歳相応、素の彼女が垣間見えた気がする。
「なんでって、アンタが言ったんだろーが」
「そうだけどっ・・・そうじゃなくって・・・!!どうして、貴方まで一緒?!!」
大混乱必死の彼女は悲鳴を上げ続ける。
俺は何だかいい気分になってきた。
「俺はその炎神をこなすヤツと闘りあってみたい。
こんなすげぇ力手に入れちまったんだ、並みの人間とケンカしたってつまんないだろ?」
だから、俺も連れてけ。
理由は筋が通ってるようにも思えたし、行き当たりバッタリの思い付きにも思えた。
もちろん俺にはどっちだって構いやしなかった。
どっちもホントだったからだ。
ピタッと立ち止まると、「はぶっっ!!」と妙な声を上げて彼女が俺の背中にぶつかった。
「いっ、いきなり止まらないでよ!!」
「あぁ、んで、これからどっちに行きゃあいいんだ?」
「そんなのわかんないよっ!!!」
「んだよ、お前、炎神こなすヤツのトコに行くって言ったじゃねーか」
だだっ広い平原で、ぎゃあぎゃあと騒ぎ合う二つの影。
せかいを巻き込む話の始まりというのは、だいたい、いつもこんな風にちっぽけなものなのだ。
END
* * *
何か長編の始まり的ストーリーな終わり方に!!;
しかし雷に竜に炎って・・・バ●ラの影響受けまくりですがな(苦笑)
でも、「〜カラッポになっちゃったらどうしよう」のセリフをどうしても言わせたくて。
授業中に大方筋を決めちゃいましたからね^^
わりと無理なくスッキリ書けてよかった♪♪♪
* * *
ブラウザバックプリーズ!!