その都市は毎日少しずつ、大きくなる。
『013.都市』
人が生み出した最高最大の人工物・都市。
人が居る限りそれは人の手で生み出され大きくなっていった。
草木を飲み込み
森を覆い
山を削り
それは確かに大きく、育っていった。
穢れた大地に蓋をするかのように
地球をまるごと
包み込む
包装紙のように。
(いったいぜんたい、誰にプレゼントするっていうんだい?)
夜が来る。
無機質な灰色の大地に。
月明かりは奇妙で。
吹く風はどこか不自然で。
波打ち寄せる浜辺ですらプールサイドとなってしまった今では
この星の大半を総(す)べる海すら似合わない。
夜、都市は食事をする。
人が寝静まる高層住宅街。
時間は深夜、もう人の息遣いも聞こえない。
突如、高層ビルがぐにゃぐにゃと動き始めた。
まるで身を捩るかのように。
ぐにゃぐにゃ捩って・・・ビルの形も成せなくなり。
ぺこん、と音を立ててアスファルトの土に均されてしまった。
今の今までそびえていた高層ビルはもう陰も形もなく。
またあちこちの場所でぐにょぐにょ、ぺこんという音が始まった。
そして朝。
日の光と自らを生み出した人間を養分として都市は大きく成長する。
都市は成長する。
もう包む大地も、食べる人間もいなくなったと言うのに。
もう包むものがない都市は今度は中にむかって芽を伸ばす。
包装紙に巻きつくリボンのように。
(それにしたって)
(いったいぜんたい、誰にプレゼントするっていうんだい?)
けれども都市にはもう養分が無かった。
もともと人に作られ人によって育まれていた都市に自己生産機能は無い。
養分の供給を失った今
都市は枯れていくしかなかった。
白くなってしまった空に高くそびえていた高層ビルがいっせいにしおれ始める。
首を折るように、中間からぐんにゃりと曲がれ落ちて。
大地を覆っていたアスファルトはボロボロと朽ち、枯れていった。
ボチャンボチャンと音を立てて海に亡骸の欠片が落ちていく。
悲鳴も、恐怖も、叫びも無い。
無人の都市はただその一生を終えようとしていた。
空に高くそびえるものが無くなった後。
大量の土埃が風に浚われて
現れた大地に
揺れているのは
屈強な、名も無き雑草だった。
人っ子一人いなくなった大地の上で
名も無き草の根を風が通り抜け
名も無きちいさな花が風に揺れていた。
この惑星≪ほし≫はいま、平和だった。
人っ子一人いなくなった、大地の上で───。
END
人間は文明と手を繋いだ。そのとき、地球の手を離してしまった。
文明は人間の為にあって、地球の為には無かった。
かえって僕らが何だかんだするよりもスパッと居なくなってしまった方が、この星は順調に回復していくのかもしれない。
ブラウザバックプリーズ!
07.08.29.TOWEL・M