それはマボロシよ。
それがアイツの口癖だった。
面倒くさくなってくると終いにはいつもそれで、おれを困らせた。
その一点張りだから、おれもそれに同意するしかなかったんだ。
そんな、数々の途方に暮れるような接触も。
いまになっては。
いまになって、それも大事な睦言だったことに気づく。
なぁ、まぼろしでいいんだよ。
おまえに逢いたいんだよ。
長くかったるい春休みが終わって、大学に戻ってきたらお前の姿が無くて。
春先からずっと無くて。
違う専攻だったから、単に逢わないだけかなって。
とくに違和感も感じず過ごしてた。
そしたらある日、入院してるっていう噂を聞いて。
なんだか手術もしたらしいと聞いて。
気がつけば───
気がつけば。
夜だなぁ・・・・
夜は困るなぁ・・・・
せつなくなるから。
逢いたくなるから。
無性に逢いたくなるから
ほんとは誰でもいいけど、無性におまえに逢いたくなるから。
なぁ、まぼろしでいいんだよ。
『それはマボロシよ。』
おまえに逢いたいんだよ。
『ね、マボロシでしょう?』
『マボロシでしょう?』
笑うきみがマボロシだった?
マボロシでもなんでもかまわないから。
おれの視界におまえを映さして。
きみの葬列/それだけがマボロシであってほしい。
END
* * *
なんとなく思いついた。
ていうか水仙自身が最近よく「それは幻だよ」と言って周囲を掻き混ぜてたり^^;