聖書から7題

配布元⇒207β

 

*Act.1(ドードビル兄弟)*

 

神よ、わたしたちは祈り方を知らない。

 

私たちは鏡

私たちの目に映ったものを、忠実に再現する虚像。

だから、私たちは私たちでさえ。

 

互いに、映しあった虚像。

 

どちらが先か、など忘れてしまった。

どちらが実像で、どちらがそれを映した鏡なのかなど。

 

神よ、私たちはどのように祈るのかを知らない。

 

どのように食事を取り

どのように遊び

どのように眠るのかさえも

 

鏡である私たちは、ただ、その実像の動きを真似るだけ。

 

神よ、それでも私たちは。

私たちは、二人で在ることができる。

 

たとえ、互いにさえも祈る言葉が見つからなくても。

 

 

私達は、どのように祈ったら良いのか分からない。

 

 

*Act.2(ホムワト)*

 

ホームズの弁明───

 

私を裁く人たちに対して、私は次のように弁明します。

 

彼は、心無き私にはじめて心の灯を燈した人であり

誰もが匙を投げた私の我侭に辛抱強く付き合ってくれた人であり

私に人生の素晴らしさを教えてくれた人である

 

故に

 

私が彼をのことを神をも差し置いて愛することは、当然であり必然であったのです。

 

 

ワトソンの弁明───

 

わたしを裁く人たちに対して、わたしは次のように弁明します。

 

彼は、わたしを非難するかのようなその言葉とは裏腹に

物言わぬ所作でわたしを労わり

ときにその明晰な頭脳でわたしを謀ることがあっても

それは不器用な彼なりの、わたしへの出来うる限りの配慮だったのです。

 

だから

 

わたしが主の教えに、この国の法に背いて彼を心から想うようになることは、避けようの無いことだったのです。

 

 

二人の弁明───

 

よって神もこの国もあなた方も、私たちを裁くことは出来ない。

引き裂けるものなら、引き裂いてみるがいい。

誓い合ったこの手は、離せない。

 

 

私を裁く人たちに対して、私は次のように弁明します。

 

 

 

*Act.3(ヤード組)*

 

ジョージ・レストレイドの見解。

 

一切のことを愛を持って行えだ?

 

ふん、無理に決まってるだろう仕事だぞ?

盗難も、失踪も、殺人も・・・

事務的に始末していく

されていく。

 

愛も何も無い。それが、現実だ。そうだろう?

 

 

スタンリー・ホプキンズの見解。

 

すべてのことを愛を持って?!

 

───無理ですね!(爽やかに☆)

最後まで事件を追う情熱ならあるんですが。

いやしかし愛ですか・・・愛、愛・・・・

 

愛って、そんなにすべてのことに必要なものなんですかね?

 

 

トバイアス・グレグズンの見解。

 

───は?なに?愛だぁ?

 

ヤロウにくれてやる愛なんざ無いね。

お美しいご夫人方になら悦んでご提示するが。

ボサッと突っ立ってるだけで日は暮れてくのに、そんなことにまで愛なんて持つ気無いね。

 

そんなことより、このご時世に男が紙巻煙草なんて、オレって破好洒落≪ハイカラ≫だと思わねぇ?

 

 

一切の事を愛を持って行いなさい。

 

 

 

*Act.4(リパ)*

 

死よ、お前の棘は何処にある?

教えてくれ。

 

死よ、お前の、そのちっぽけな棘をたった一本抜いてしまうだけで。

 

目の前の愛しい女≪ひと≫は、その頬を、その唇を。

再び、いとけなく淡い春の花で飾ってくれるだろうか。

 

──嗚呼!

 

死よ!!

教えよ!!

 

お前が彼女にくれた、ちっぽけなお前の棘は何処にある?!

 

見つけさせてくれ

抜かせてくれ

 

薔薇より忌まわしきその棘を

 

 

さもなくば、この胸に突き刺さったナイフを静かに抜いてくれ。

 

 

彼女の頬を、涙の滝で濡らすまえに。

 

 

死よ、お前の棘は何処にあるのか。

 

 

*Act.5(リパハル)*

 

当然のことです。

 

彼については、新聞に載せられた根も葉もない羽の生えた記事と

警察が所持する、わずかな物証しか残されていないのですから。

 

そのあと、いくつもの推測が彼を伝説・神格化しましたが。

 

結局のところ、それらは推測。

フィクションでしかないのです

 

そう。

あなたがたは、その日、その時を知らないのです。

 

フィクションにもなり得なかった、ひとりの男と少女の短い出会いと日々を。

 

 

猟奇的殺人の祖と言われた男の儚い白昼夢の、はじまりのその日を。

 

 

あなたがたは、その日、その時を知らないのです。

 

 

*Act.6(ルパン)*

 

家のプライドにしがみついて、彼らは石を捨てた。

美しく、清らかだった僕の石≪母≫を。

 

それが、結果的に彼らから彼らが大事にしていた石≪宝石≫を奪うことになった。

そしてそれが、僕の礎の石≪生きザマ≫となった。

 

あの日とは比べものにならないほど成長した僕は、蒼褪めた顔を晒した彼らにニッコリと微笑みかける。

 

あの日。

あなた方が捨てた石の愛しい小石は

世にその名を馳せる立派な大悪党の首領になって戻ってきましたよ───と。

 

さて、あなた方が哀れな民草から搾り取った財力、すべて頂戴すると致しますか。

 

この稀代の大怪盗、『アルセーヌ・ルパン』が、ね。

 

 

『家を建てる者達の見捨てた石、それが礎の石となった』

 

 

*Act.7(マズルー)*

 

主よ、どうか来てください。

 

私は最初から何も望んでなんかいない。

主よ、貴方のその美しく白い手が

血に汚れていようとも私はちっとも構わない。

 

主よ、だからそんなに自責の念に駆られないで。

 

私の手の届かない処に行ってしまわないで。

行かないで

逝かないで

 

主よ、私はこんなに叫んでいるのに

私の声が、聞こえないのですか。

そんなに肩を落として、何処に行こうというのですか

私を置いて

たった一人で

 

ああ 主よ

 

世間はまた嘘を吐いている

貴方が死んだなどと軽々しく嘘を吐いて

野蛮な法の擁護者どもが歓喜に手を挙げ囃し立てている

 

ああ、主よ。

だからどうか早く帰って来て下さい。

 

世間を飛び交うこの嘘が

嘘なのだということを証明してほしい。

 

パトロン。

 

いま、私はなんにも欲しくない。

 

ただ、ひとつだけ。

貴方という存在が欲しいだけ。

 

 

主よ、来てください。

 

 

 

 

 ブラウザバックプリーズ!

拍手掲載:2005.12.11.SUISEN
Theme部屋移動:2006.02.22.SUISEN