きみを愛してる。

 きみを想うとき、僕の心は掻き乱される。

 

 だからきみなんか

 

 死んでしまえばいいのに。

 

 

 

『だいすきだよ。だから死ねばいいのに』

 

 

 

 そこは未だ陽の昇らぬ朝───霧立ち込めるイーストエンド。

 ミドルセックスストリートにひっそりと佇む安宿の一室。

 寝室のベッドに横たわる男女は、規則的な呼吸を繰り返している。

 そんな灰色の静寂の中に、カツンと響いたヒールの音。

 二人分の膨らみを孕んだベッドの上に、蒼い影が伸びる。

 その影が首切り斧とも死神の鎌とも思える凶器をゆっくりと掲げ、一思いに振り下ろした。

 

 ガッ、という鈍い音を立てて凶器が枕を叩き切り、さらにその奥にある木製のベッドの骨を叩き割る頃には、

 先ほどまでベッドに横たわっていた男が同伴していた女を抱えてそこから大きく飛び退けていた。

 ねっとりと絡みつくような琥珀の眼と、睨みを利かせた紅い眼がぶつかる。

「ジルドレ!!朝っぱらから何しやがる!!」

「残念☆今度こそイケルと思ったのに。ジャックってば反射神経良過ぎ」

 ジルドレと呼ばれた男は悪びれもせず、舌を出して残念がった。

 これに対峙したジャックと呼ばれた男は一瞬怒気を増したがすぐに諦めたように息を吐いた。

 そして半壊したベッドに目を遣り、さらに溜息を零す。

「あーあ。これで何回目だよ。弁償しろよ、お前」

「どうせなら天蓋付きのヒラヒラのびらっびらにしてあげようか?」

「止せ。俺にそんな趣味は無い。・・・・てーかハルヒ、起きろ」

 抱きかかえた女・・・もとい少女は未だ深い眠りの底だった。

 もうちょっとで死ぬトコだったんだぞー。そんな言葉を掛けながら、ゆさゆさと少女の身体を揺らす。

「貸してージャック。僕が起こしたげる」

「いらん。というか何だそのあからさまに首を絞めようとする手つきは!!」

 ハルヒと呼んだ自身の腕の中にいる存在を抱いたまま、ジャックは敏捷な動きで後退った。

「ちぇー」

 ワキワキと指を動かしながら、ジルドレは膨れた。

 

 

 僕とは対照的な鮮烈な紅を身に纏うきみ。

 それは純粋に狂気的で、張り詰めていて、美しい。

 その色彩には素直に憧憬する。

 愛しい、いとおしい、大好きな、きみ。

 そんなきみの隣にいる少女も。

 

 僕の大好きなきみたち。

 大好きで、一緒に居ると楽しくて。

 

 大好きで大好きで大すきでだいすきで・・・・

 

 

 

 ねぇ、こんな僕の気持ち、きみは知ってるの?

 

 

 

「ひっどいなージャックは。ジャックもハルヒちゃんのことも大好きなのに、僕がそんなことするはずないじゃない」

 

 そうだよ、僕はこんなにも、きみたちを愛しいと思っているのに。

 

「いきなり人の寝込みを愛用の得物で襲うようなヤツに言われてもなぁ・・・・」

 

 ほら、これっぽっちも伝わらない。

 

 だから

 

 だったら

 

「フンだ。ジャックなんか死んじゃえばいいのに」

「ああ?!!」

 

 死んでしまえばいい。

 この愛情が伝わらないのなら、僕の愛しさが無駄になる、その前に。

 

 愛してる

 大好き

 

 そんな感情、せっかく抱いても伝わらない、伝えられないのならばいっそそんな愛情を抱かせた相手が死ねばいい。

 

 そうすればもう、心を掻き乱されずに済む。

 

 

 

「ふあ・・・・・あれ、ジルくん。朝早くからいらっしゃい」

「おっはよーハルヒちゃんv」

「ようやく起きたか・・・・・」

 

 

 

 だからきみもきみのその少女も

 

 死んでしまえばいいのに。

 

 

 

 今日も夢想に終わった二体の愛しい屍になるべき男女に向かって、ジルドレは微笑む。

 

 

 

 

 

END

周りに一人、こういう極論の持ち主がいる。
本気で大好きvって思ってるのに、本気で死ねばいいとも思ってるそうな。
あ、それってジルドレの恋愛価値観っぽいと思って登用。
でも文筆力無いから説明しないといけないっていう。哀。

 

ブラウザバックプリーズ!

 

09.02.04.TOWEL・M