紅茶は冷めてしまった
淹れておいた紅茶を飲もうとカップに手を伸ばす。
口にした途端、思っていたのと違う冷たい感覚に、少々呆れる。
淹れた紅茶が完全に冷めてしまうほど、自分は何をしていたのかと。
『ジンクス』
私はよく紅茶を淹れる。
飲み物はあればあるだけ飲んでしまう方だから、コーヒーよりも紅茶の方が体にはマシ、という理由からだが。
私の親友はそんな私の淹れる茶を『美味い』と言う。
茶の淹れ方にこだわりなどあるはずもなく。
いつも適当だからそんな筈は無い、と友人に言ったら、それが適当なのだと言葉遊びで返された。
そんな感じで、私が茶を淹れたのを見計らったかのように彼が来ることが増えた。
ちょうど好い処にお邪魔したみたいだ。
最初のうちはそうだなと取り合っていたが、それも続けば『本当か?』になってくる。
もちろん、茶を淹れるたびに必ず来るわけではないから(そんなこと言ってたら昼夜一緒に居ることになる)本当に偶然なのかもしれないが。
ともかく、彼はこれでもかというほど示し合わせたように茶の時間に訪れた。
「別に狙って来てるつもりは無いんだけど」
苦笑いで茶を受け取る彼は、それでも嬉しそうに匂いを嗅いだ。
「きっときみの淹れるお茶が美味しいのがいけないんだよ」
くすくすと笑って心外なことを口にする。
「無意識に、喚び寄せられる───」
ほのかに立つ湯気のむこうで、水面のような眼が静かに伏せられた。
すっかり冷えた紅茶を飲み干して、ポットから注ぎ足す。
だがしばらく濾し出されたそれは煌めく飴色ではなく濃すぎる焦げ茶色だった。
小さく溜め息を吐く。
温かくも苦味ばかりのそれを飲み干しながら。
何をしていたのだろう、自分は。
淹れた紅茶が冷めてしまうほど
その色も味も変わってしまうほど
───彼が『美味い』と褒めてくれた。
ふるふるとかぶりを振って、机の上に一週間置きっぱなしの、一週間前の新聞を見やる。
この一週間、郵便受けを見ていない。
きっと玄関は新聞やら手紙やらで埋まっていることだろう。
だが、一週間前も一週間後も世間が騒ぎ立てている内容は変わっていないのだから、今日の新聞なんて見ても見なくても同じことだ。
一週間前のそれに大きく見出しを構えているのはこの国の国民が誇り、上層の人間が最も忌み恐れる、稀なる怪盗の死。
刑法に引っかかる人間が一人死んだというだけで、それが一体どうしたというのだろう。
空っぽになったカップに、新しく紅茶を注ごうとポットを傾ける。
ポタリ。
盛大に、溜め息が漏れた。
カラになったティー・ポットと、『二人分の』カップをトレイに載せ、部屋を出た。
本当に───何が、したいのだろう。自分は。
待っていたのかと揶揄われたら何も言い返せない。
その理由が、トレイの上でカチャカチャと小さく声を上げて啼いていた。
それでも部屋に戻るまでにその姿が部屋に在ることを期待してしまうのだろう。
開け放たれた窓の前。
不敵に笑ったその瞳。その声が。
───やあ、僕はお茶の時間を逃してしまったかなモーリス───
舞台の上のごとく響くのを、期待してしまうのだろう。
そうしてもう何度目にもなるとも知れない一縷の望みをかけて
回したドアノブ、ゆっくり開けたその瞬間。
額をかすった風は、また思い過ごしで終わるのだろうか。
END
* * *
ルパンの死が公に知れ渡って、否応無しにもモーリスの耳にも届くことはしばしばある。
いつもそれが嘘で終わるので嘘だと思ってる(思いたい?)んだけどやっぱり心中は穏やかじゃないモーリスを目指してみました^^
滅多に動揺とかしなさそうなんでね、モーリスは。
表面上に出るとしたらこんな感じかなーと。^^
けっこう原作ではルパン何度も死んでる(もちろん虚偽だけど/笑)んで、
そういう一報を聞くたびにモーリスはどうしてんだろうとか考えると萌える・・・
とりあえずウチのモーリスはこんな感じですが如何でしょう^^
ちなみに今、これのルパンサイドが思い浮かんでしまったので後日そっちの方も。(笑)
↓オマケ↓この後ホントに部屋にルパンが居たら(笑)
「やあ、モーリス。その様子だと僕はお茶のタイミングを逃してしまったかな?」
「・・・・・・・・ぁあ」
「そうか、それは残念。君の淹れてくれた紅茶で一息つきたかったんだけど───ってモーリス?」
「・・・・・・・」 (若干俯いたまま)
「モーリス??」 ひょい。(←顔覗きこんだ)
「ッ、も、モーリスっっ」 (�瑤�ょっ!)
「・・・・・・」
「泣いてるなら言ってよぅ・・・・・!!」 あたふたワタワタ。(動揺マックス★)
「・・・・・いま淹れる」
こんな感じでどうだろう(笑)
モーリスは泣いてんのか無いのか分かんないぐらい静かに泣くと思います。
目にありったけ涙溜めて、溢れたひとすじがスウッと頬をつたってそれだけ、みたいな♪
いかん、萌えてきた(笑)
ブラウザバックプリーズ!